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新選組誕生秘録ー(24)賄いの井戸

(27) 賄いの井戸

俺はすぐに賄いからお勢を連れ出し、
すぐに屯所から逃げようと思った。
だが、思い直した。

いま屯所から突然お勢が消えたら
一番困るのは隊士たちだ。
俺にああいう命令を出したが、
土方さんがすぐには行動しないと俺は見た。

お勢が消えたら、残された三名のおばさんでは
百名近い隊士の食事は作れない。
これは確実だ。

かと言って、仕出し弁当を毎回頼むのは不可能だ。
どうするか。
土方さんは、すでにお勢の代わりを探している。

俺としても、いまお勢を連れ出しても
どこへ行ったらいいのか当てはない。
会津はまずい!土方さんの動きによっては
会津がお勢を消すことがあり得るからだ。

土方さんの話では大政奉還は必須だという。
なら、長州方に寝返った薩摩を加えた尊王派と、
公儀、会津の佐幕派の新しい戦いが必ず始まる。

池田屋事件以来、新選組は会津にとって
絶対不可欠な戦力だ。
お勢のために捨てるとは考えられない。

では、お勢が居て安全な場所とはどこか。
・・・今の京にはない!
そうしたのは土方さんなのだが、
その彼がお勢を消そうてしているす!

理不尽な話だ!
俺はお勢を護り抜くと決めている!
屯所の大廊下を歩きながら、
俺は進退窮まって居た!二人の居場所がない。

賄いの男衆の仙吉が叫びながら走って来た。
「豪士さん、大変だァ!」
何事かと俺が行くと、息を切らして仙吉が言った。

「お勢さんが、お勢さんが井戸へ飛び込んだ!!」
とっさに俺は、土方さんの指令を彼女が知ったと思った。
自分さえいなく慣れば、俺にも隊にも迷惑をかけない!

お勢の考えそうなことだった。
なぜそれに気づかなかったのか!
俺は賄いへ向かって走った。

屯所で一番大きくて深い井戸は賄いの井戸だ。
それを誰よりも知っているのはお勢だ!
くっそォ!!

それに気づかなかった自分を呪った!
死ぬな、お勢!
俺は夢中で賄いへ走った。






red18
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