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悪魔の微笑み 27 白貴と会える

9 悪魔の恋

ドアにノックの音がした。
上重がドアを開けると、本庁の捜査官たちが立っていた。
小声で上重に言う。

「どうだ、あったか」
無言で首を振る上重。
上重はそう私に告げただけで、拳銃の家宅捜査などしていない。

「そうか、じゃ我々は引き上げる」
「こっちもすぐに戻りますから」
上重の言葉にうなづいて捜査官たちは玄関へ向かった。

「しばらく家を出るな」
「どうして!」
「堺の次はお前かもしれない。出るな!」

それだけ言って上重は部屋を出て行った。
この部屋に堺君の拳銃がないことを、
パパが認めてくれただけでも嬉しかった。

そんな見当ちがいの疑いなんか、おかしいことに気づけよ!
上重の車が出て行く音が聞こえた。
また、ドアにノックがした。

もう家には私以外誰もいないはずなのに。
ドアを開けると白貴が立っていた。
「お前と話がしたい」

退がるとドアを閉めて彼は入って来た。
右手に堺君の拳銃が握られていた。
日本の警官の拳銃は、外国の拳銃と明らかに違う。

これで私を撃とうと言うのか。
私が壁まで退がると白貴はつぶやいた。
「話したいと言ってるだろ!お前を撃つ気は無い」

「話って、なに」
堺君にあんなことをしといて、今頃話もないだろう!
「お前と、いや真奈美と付き合いいんだ」

近くで見る白貴の目の底には、不気味な殺人者の陰があった。
「あなたは親友だった堺君を、虐殺した!許せない!」
「いや、奴はお前の親友なんかじゃない!
好意を持っているふりをしてお前を利用した」

「殺人を犯した人間となんかと付き合えない!」
「俺の殺しには全て理由がある!恨み、憎しみ、私怨で
殺したことなど一度もない」

「じゃなぜ堺君を!」
「許せないからだ!父親からお前を預かってその能力を知り、
警官としての点数稼ぎ、要するに出世に使おうとした」

私には、彼がそんな風にはとても見えなかった。
「お前と付き合えたら、絶対殺しはしない!約束する」
疑惑の目で私は白貴を見つめた。

「俺は本気だ!お前がいなくなって、学校へ行かずに探し回った」
同級生なら、家は知ってるはずだ。
「家へは何度も行った。親父さんに追い返された!」

父は何もそんなことは言ってなかった。
「何を言っても、これまでの殺しの烙印は消えない!」
その通りなのだ!殺人は、他の犯罪とは次元が異う。

「証拠にもならないかもしれないが、俺の気持ちを見せる!」
そう言うと彼は拳銃を左手に持ち替え、
机の椅子から布団を取って拳銃に巻きつけた。

椅子に右手を置いて、開いた掌に銃口を当てた。
「やめてェ!!」
何をするかが分かり、私は絶叫した。

私の目を見つめたまま彼は言った。
「これで俺は、二度とナイフで人を殺せない!」
そして引き金を引いた。

鈍い銃声がして、座布団ごと彼の掌を銃弾が貫いた。
ショックと激痛に彼の顔が歪んだ。
それでも、私の目を見つめることをやめなかった。

言い知れぬ感情で、私は泣きそうになった。

red18
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